龍炎狼牙論
永山薫
龍炎狼牙(る−えん・ろうが)と云う漫画家がいる。
これまでに二冊の単行本を上梓しているが、まだまた発展途上段階の作家だ。絵柄はコミックハウス系アニメ絵ということになるのたろうか? 目玉が大きくて幼児体型なキャラがSF的、超常的な世界で闘い、犯し、犯される。このあたりもそんなに珍しいワケではない。
ただ美少年漫画となると、ちょっとひっかかってくる人なのである。
現在のところ未完成の「魔討締諏・斬奸」(フランス書院)シりーズ。これがなんとゆーか、そこココにショタ趣味を散りばめた「好きなヤツなら思わずニヤリ」な世界。同作は複数主人公制を取る討魔モノた。背景は魑魅魍魎が跳梁跋扈する近未来。魔物たちと聞う異能者バウンティ・ハンターたちと云うワケで、よくある「エロエロ魔物と戦う霊能力者集団」と云うパターンた。最終的にオーケストレーションするのだろうが壮大な世界の部分部分を見せていくつまみ食い的なストーリーは判りづらい。判りづらいが枠組み自体はパターンである。間題は出てくる少年が変に色っぼいという点だ。なんせ第2話「羅刹」のサイバースペースに登場する中性的な少年はベアバック(背中丸出し)のラバー・ジャンプスーツ(の半ズボン型)に同しくラパーのロング・グローブというシュミシュミないでたちなのだ。このあたりでショタ探知器が動き出した永山であったが、トドメは第一巻末にして漸く登場した真の主人公格らしい美少年・要である。
見た日は完全に女の子だ。別に女装をしているワケではない。半ズボンの小学生体型である。それでも、まるで男装の美少女に見えてしまう。半ズボンから伸びた脚も男の子の固さがない。指で押せば際限なく潜り込んでしまいそうな柔らかさである。主人公にしてはひ弱な印象だ。その印象は、要が強力な使い魔三人娘に守護されていること、イザ戦いとなるとカッコイイ青年ミツルギに変身してまうことによって、ことさらに強調されている。つまり要の姿では「カッコつけてるけど、ひ弱で可愛い女の子みたいな坊や」にすぎない。常に保護を必要とする犯られ役なのだ。本来ならば戦闘モードのミツルギがカッコ良く闘う姿こそがメインになるべき物語である。だが作者はそうはしない。ミツルギはこれまでのところオマケみたいなものだ。第2巻の見せ場は少年姿の要が悪夢の中で小さなペニスをびんびんに勃起させながら触手ぬるぬるの魔物にアナルを犯され続けるシークエンスであり、脇役の少年が女の子におもちやにされるシーンである。ショタの色眼鋭を通して見ると龍炎狼牙の描く少女たちが逆に少年ぽく見えてくる。例えば第1巻の「ガルアード」に登場するヒロイン、ライアットのレインなどは巨乳であるにもかかわらず、革ジャン、タンクトップ、ワークブーツと云う極めてボーイッシュなスタイルが似合う「擬似少年」である。勿論、女の子らしい女の子も出てくるのだが、こうした擬似少年を少年の側に算入すればさらにこの人のショタ濃度は高まる。
レインもまた、カッコよく登場しながら、いいように犯られ辱められる。犯られ役でもある主人公がこれまでいなかったワケではない。三蔵法師類型の発展形とでもえばいいのだろうか? 超越的な力を持ちながらも、ひ弱で中性的な外見を持ったリーダー。あるいは周囲が守らざるを得ない驕慢で非力なお姫様。いずれにしてもこれは今時の受け身な男の子のある種の理想形態であろう。彼らはマチズモで凝り固まった旧式のヒーローには鼻もひっかけない。筋肉なんて暑苦しいし、強いだけしや誰にも抱いてもらえない。美形と云うよりは愛らしく、時には恥ずかしくも凌辱され、弄ばれる。殉教者的なマゾヒズムに衝き動かされて、神輿のように担がれて闘いの庭に赴くヒロイン的ヒーロー。勝つよりも気持ちのイイ破減を目指す病気なジヤンヌ・ダルク。もちろん、今時の男の子たちですら破減までは行かない。犯るだけ犯らせて、最後の最後で敵のタマを取る。美味しいとこ独り占めの構図だ。これも歴史の必然なんだろうか? 龍炎狼牙一人ならば特異な現象と呼ぺるだろうが、どうもそうではなさそうだ。今やある意味で先進的なエロ漫画の世界どころか、パイオレンス・マチズモの牙城であった、「月刊少年チャンピオン」(秋田書店)ですら、しょっちゆう女装させられ、アリスと呼ばれる弱っちい金髪の美少年が活雄するナゾの巨大ロポット物「轟雷迎撃隊」(ほづみ・みずほ)が載っちやう時代なのだから。(補足:「轟雷迎撃隊」は終わってしまいました…。その後、福本義裕・原作、高岩ヨシヒロ作画の女装少年怪盗物「リゲイナー」なんてのも登場したが惨敗。秋田はやっぱりマッチョなのか?)